審査員からの応援メッセージ(中村 靖彦)

作品制作に取り組むみなさんへ

作文・図画作品の制作に取り組む皆さんへ向けた、審査員のみなさんからの応援メッセージを紹介します。

審査会委員長中村 靖彦(なかむら・やすひこ)

東京農業大学客員教授、農政ジャーナリスト
1935年(昭和10年)宮城県生まれ。1959年(昭和34年)3月東北大学文学部卒業、同年4月4月NHK入局。1974年(昭和49年)6月解説委員室解説委員、2001年(平成13年)3月NHK退職。現在は東京農業大学客員教授、女子栄養大学客員教授、特定非営利活動法人「良い食材を伝える会」代表理事など多数の役職を務める。「牛丼 焼き鳥 アガリクス」「食の安全と安心を求めて」「食の世界にいま何がおきているか」「牛肉と政治不安の構図」「ウォータービジネス」「遺伝子組み換え食品を検証する」「ブラウン管の証言」「日記が語る日本の農村」「狂牛病」など著書多数。

農村が持つ「命」や良さを作品で伝えよう
審査委員長として3年間審査にあたっていただいてきましたが、気付いたこと、感じたことはありますか?

私も様々な作文を読んでいて、とても面白いと思いました。文章表現もさることながら、子どもたちの目をとおして農村の縮図を感じることができました。農村は高齢化が進んでおり、地域のつながりも昔とは違ってきています。田植えや稲刈りなどは、農業機械の高性能化にともない、かつての共同作業や助け合い、「結い」のようなつながりは少なくなりました。しかし、コンクールに応募された作品からは、地域でのおじいさん、おばあさんと子どもたちとのふれあい、勤めの合間に農作業に従事する父親の姿などがうかがえ、作文や図画ともに子ども目線でよく描かれていると感じました。

先生は他のコンクールの審査員もされていますが、「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクールの特徴は何だと思われますか?

私は高校生や大学生、一般を対象にした食や農業に関わるコンクールの審査員も行っていますが、「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクールは、今もっともトレンドなテーマを扱っていると思っています。小学生・中学生を対象にした審査は初めてでしたが、戸惑うことはありませんでした。家族を思いやる子どもたちの温かい心があふれていることが、このコンクールの特徴ではないかと思っています。

子どもたちの作品について、特に印象に残るものがありますか?

コンクールの性格上、作文も図画も「おにぎり」を扱った作品が目立ちますが、いい題材だと思います。いつの時代も「おにぎり」は、祖父母や両親の愛情がこもった食べ物であり、親子や家庭の温かさを表しています。核家族化が進み、都会ではお年寄りと一緒に住む家庭が少なくなりましたが、祖父母を思いやる作文や図画の作品が目立つのも、このコンクールの特徴ではないでしょうか。

先生の子ども時代の「ごはん・お米」とはどのようなものだったのですか?

私の子ども時代は戦争の真っ只中であり、長野県に疎開していました。疎開先は非農家だったので、食べ物には苦労しました。毎日イモばかり食べており、空腹で勉強どころではありません。お米はとても重要でした。環境も変わり栄養失調で体をこわし、学校にもあまり行けませんでした。こうした子ども時代の体験があったためか、「自分のものをまず食べる」という、食べ物に対する“こだわり”が残っています。

先生はNHKの解説委員を務めるなど、ジャーナリストとしてご活躍されておりますが、ジャーナリストをめざしたきっかけは何でしょうか?

私の父は経済学者だったのですが、学者という仕事はあまり好きではありませんでした。大学卒業を間近にし、自分はジャーナリズムに合っているのではないかと思い、NHKに入局しました。NHKに入って最初の勤務地は山形県の鶴岡市でした。庄内の米どころであり、米増産時代で農村がもっとも元気があった頃です。農村こそが社会・教育の面の基本であり、原点だと感じました。若い頃に農業・農村を体験することは、家族や社会と関わっていく上で、絶対にプラスになるのではないでしょうか。最近、NHKに入る若い人は芸能やドラマ担当を希望する人が多いのですが、ドラマを演出する場合などには、農村のルール・暮らしの知恵などを知っておく必要があります。
ジャーナリストの活動以外にも、平成10年から国産の食材が優れていることを日本全体に広く普及し、おいしくて安全な農産物や加工食品を発掘し、次の世代へ伝えていくため、「良い食材を伝える会」を主宰しています。賛同する会員約500名に支えられ、活動の一環として「食材の寺子屋」を開設して、さまざまな角度からの食の勉強会を月に2~3回行っています。
研究・調査なども多く、今の私の仕事は不思議なことに父の仕事に近づいてきているように感じています。

ジャーナリストとして、作文・図画コンクールの審査員としての目で見て、農村の良さや役割は何だと思いますか?

農村には「命」があります。農家には牛や豚、鶏がおり、農村にはトンボやカエル、バッタがいます。命の存在を小さいうちに感じ取ることはきわめて大事なことです。農村にはお年寄りや子どもたちの交流もあります。こうした体験をすれば、いじめや家庭内暴力など生じないでしょう。農村の持つ「命」や良さ・役割を伝えるのも、このコンクールの役割であり特徴ではないでしょうか。

最後に全国の子どもたちへの “応援メッセージ”をお願いいたします。

「ごはん・お米」は命にかかわる根源的なものです。これを生み出す農村には、思いやりや温かさがあります。都会にもごはんを通じた心の交流があります。ぜひ、自分の目で見て、体験して、感動した気持ちを作文や図画に表現してコンクールに出品してください。

(平成25年6月取材)

他の審査員からの応援メッセージを見る

審査員からの応援メッセージ

審査会委員長
尾木 直樹氏

教育評論家、法政大学名誉教授

作文部門審査会委員
野口 武悟氏

専修大学文学部教授、公益社団法人全国学校図書館協議会理事長

図画部門審査会委員
岡田 円治氏

元(株)NHKアート代表取締役社長、日本美術家連盟準会員

作文部門審査会委員
竹村 和子氏

(公社)全国学校図書館協議会常務理事 事務局長

図画部門審査会委員
西巻 茅子氏

絵本作家
(一社)日本児童出版美術家連盟

作文部門審査会委員
堀米 薫氏

児童文学作家
(一社)日本児童文芸家協会理事

図画部門審査会委員
東良 雅人氏

元文部科学省初等中等教育局視学官、京都市教育委員会京都市総合教育センター指導室長

作文部門審査会委員
真鍋 和子氏

(一社)日本児童文学者協会評議員、日本大学芸術学部講師

図画部門審査会委員
郡司 明子氏

群馬大学教授

作文部門審査会委員
位川 一郎氏

農政ジャーナリスト、元毎日新聞経済部編集委員

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