審査員からの応援メッセージ(堀米 薫)

作品制作に取り組むみなさんへ

作文・図画作品の制作に取り組む皆さんへ向けた、審査員のみなさんからの応援メッセージを紹介します。

作文部門審査会委員堀米 薫(ほりごめ・かおる)

児童文学作家
1958年、福島県生まれ。岩手大学大学院修了。(一社)日本児童文芸家協会理事。日本児童文芸家協会第13回創作コンクールつばさ賞中学年部門の優秀賞作品『牛太郎、ぼくもやったるぜ!』(2009年、佼成出版社)でデビュー。『チョコレートと青い空』(2011年、そうえん社)で、第41回日本児童文芸家協会児童文芸新人賞を受賞。宮城県角田市で和牛肥育・水稲・林業を専業で営みながら創作を続けている。

素敵な発見を求めて感性のアンテナを伸ばそう
先生にとって「ごはん・お米」はどのようなものですか?

福島県福島市から宮城県角田市の農家にお嫁に来て、初めて米作りを経験しました。暑い日に田んぼの草取りをした時は、あまりの大変さに2日ほど具合が悪くなってしまいました。お米を作るのはこんなに大変なんだと知り、やっと収穫して食べたごはんのおいしかったこと! 自分で苦労して作ったものはおいしいし、いとおしい。だから、私は決してお米を無駄にできません。皆さんもぜひ、米作りを体験してみてください。ごはんのおいしさが分かると思います。きっと、もっと食べたくなりますよ。

先生はどんなお子さんでしたか?

運動は苦手でしたが、自然を観察するのが大好きな子どもでした。
両親は学校の教員でした。リビングの壁一面に本棚があり、本に囲まれて暮らしていました。毎晩8時になるとテレビを消し、家族みんなで1時間本を読むのが習慣でした。子どものころに読んだ本には思い出がたくさん詰まっています。捨てられず、今でもわが家の本棚にあります。

先生が文章を書くことに興味や関心を持ったきっかけは何でしょうか?

「産直通信」がきっかけです。わが家のお米を販売する際に添える、田んぼや農家の暮らしの様子を伝えるお便りが「産直通信」です。夫から編集長を任されていました。
子どものころから作文が苦手だった私は、毎月苦労しながら書いていました。「思ったことを素直に書けばいいんだよ」とアドバイスされましたが、それは人前で裸になるような気分で筆が進みません。でも、すぐに次の締め切りが来てしまい、格好つけている余裕もなくなりました。そんな状態で作った「産直通信」にもかかわらず、お客さんから「堀米さんの『産直通信』は面白いね」という声をいただくようになりました。いや応なしに“裸”になってしまったけれど、そのおかげで自分の考えに共感してくれる人がいると分かり、うれしくなりました。本で調べたことや誰かから聞いたことではなく、自分の体験に根差した言葉には力があります。だから反響があったのでしょう。それ以来、書くことで伝えるという仕事が楽しくなりました。

児童文学作家になろうと思った理由は何ですか?

農家になってみると、自分が描いていた農家のイメージと実際は違っていましたし、農業や農家の本当の姿がきちんと伝わっていないとも感じるようになりました。
農業はやりがいのある仕事です。農家には豊かな知恵と底力があります。これからの時代を生きる子どもたちにそのことを伝えたいと思い、子ども向けの作品を書くことにしました。
農業は、考えごとをしながらでもできる作業が結構あります。その時に、物語の展開を考えたりしています。ですから、畑も牛舎も私の大切な書斎です。農業には食料だけでなく、物語や音楽といった文化も生み出す力があると思います。

これまで執筆された中で特に思い出深い作品を教えてください。

『チョコレートと青い空』は、わが家に農業研修に来たガーナ人の青年との交流をもとに書いたものです。この作品をきっかけにガーナへ行く機会に恵まれ、現地の農家や作家と交流することができました。
この本が出版されたのは2011年4月、東日本大震災が起きた翌月です。最初は出版は無理だろうと思っていましたが、出版社の人たちが頑張ってくれました。その当時、私が住む角田市は、東京電力福島第一原子力発電所の事故のために稲わらが汚染されたり、牛を出荷できなくなったりしていました。
そんな時に世に送り出された本なので思い出深く、私に力をくれる本です。その後、被災地に生きる人たちの姿を書き記すことは、私にとって大切な仕事の一つになりました。

子どもたちが応募作品を書くにあたって期待することは何でしょうか?

入賞作品を読んで、皆さんは周囲の出来事をよく見て、聞いているなぁと思いました。ごはんやお米のことに限らず、日々の生活の中でたくさんのことを感じているのですね。その感性を大切にして大人になってほしいです。
作品を応募する時は、感じたこと、発見したこと、疑問に思ったことを素直に書いて、私たち審査員に教えてください。「何か面白いことはないかな」「わくわくすることが起きたらいいな」と考えながら物事を見ると、いつもとは違う何かに気付くことができます。皆さんはとても性能の良いアンテナを持っています。そのアンテナを思う存分伸ばして、自分らしい発見と感動をつづってください。

全国の子どもたちへの応援メッセージをお願いします。

たくさんの言葉を味方につけましょう。知っている言葉が多いほど、面白いことをたくさん見つけられるようになります。
言葉を知るには、読むことが大切です。難しい本でなくていい。マンガでも言葉を学ぶことができます。図鑑を見るのも楽しいですね。物語を読むのも良いです。物語には人の心を成長させる力があります。主人公を通して物語の世界を生きることは、皆さんに生きる力を与えてくれますよ。

(平成28年7月取材)

他の審査員からの応援メッセージを見る

審査員からの応援メッセージ(50音順)

作文部門審査会委員長
中村 靖彦

東京農業大学客員教授、農政ジャーナリスト

図画部門審査会委員長
尾木 直樹

教育評論家、法政大学名誉教授

作文部門審査会委員
設楽 敬一

(公社)全国学校図書館協議会理事長

図画部門審査会委員
岡田 円治

元(株)NHKアート代表取締役社長、日本美術家連盟準会員

作文部門審査会委員
竹村 和子

(公社)全国学校図書館協議会常務理事 事務局長

図画部門審査会委員
岡村 泰成

美術家集団「Moss Spirits」代表、日本美術家連盟会員

作文部門審査会委員
堀米 薫

児童文学作家
(一社)日本児童文芸家協会理事

図画部門審査会委員
小柳津 須看枝

日本美術家連盟会員、元サロン・ド・トウキョー運営委員

作文部門審査会委員
真鍋 和子

(一社)日本児童文学者協会評議員、日本大学芸術学部講師

図画部門審査会委員
西巻 茅子

絵本作家
(一社)日本児童出版美術家連盟

図画部門審査会委員
東良 雅人

元文部科学省初等中等教育局視学官、京都市教育委員会京都市総合教育センター指導室長

  • 作文・図画コンクールトップへ戻る