JAグループ 食や農を学ぶ 「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクール 審査員からの応援メッセージ(野口 武悟) 審査員からの応援メッセージ(野口 武悟) 作文・図画作品の制作に取り組む皆さんへ向けた、審査員のみなさんからの応援メッセージを紹介します。 野口 武悟(のぐち・たけのり) 専修大学文学部教授、公益社団法人全国学校図書館協議会理事長筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程修了、博士(図書館情報学)。文部科学省図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議委員、千代田区子ども読書活動推進会議会長、横浜市社会教育委員などを務める。主に学校図書館や子どもの読書活動、電子書籍サービスなどについて研究している。 野口先生にとって「ごはん・お米」とはどのようなものですか?ごはん・お米、にまつわる思い出を教えてください 私は栃木県下野市出身で、合併前は国分寺町という名前の水田が多い町で育ちました。親戚もお米を作っていますので、お米はとても身近な存在です。小学生のころは田植も体験しました。手植えだったので苗をまっすぐに植えられず苦労したのをよく覚えています。 私はどちらかといえば、パンよりご飯派で、食べることが大好きなので、海外視察などでしばらくお米が食べられない期間があった後は「やっぱり米だな」と実感します。特に新米は甘味、もっちり感が格別です。あっという間に口に入れてしまいがちですが、一粒を作るのにどれだけの労力がかかっているかを考えると、お米はとても価値の高いものだといつも思いながらいただいています。 野口先生が子どもの読書活動に興味や関心を持ったきっかけはなんでしょうか?また、子どもの読書活動について現状をお教えください。 幼少の頃から鉄道が好きで、鉄道の図鑑を読むために図書室に行っていました。当時としては珍しく、学校の図書室には学校司書さんがいて、いつでも図書室が開いており、私にとっては安心感のある環境でした。鉄道の他にも、植物や動物などの図鑑もたくさん読んだことを覚えています。身近にこういった環境があったことが、私が読書活動の研究に進むきっかけだったのかもしれません。 また、大学時代に教育学部でしょうがいのある子どもたちの教育に興味を持った頃、しょうがい者の読書活動についての話が講義のなかで出てこないことに気が付きました。しょうがい者だけでなく、誰しも年を取ると目が悪くなるなどで本を読むことが困難になります。そういった人も読書を楽しめる環境をつくりたい、読書のバリアフリー化を進めたいと考えています。 現代の子どもの読書活動については、全国学校図書館協議会が70年以上前から子どもの不読率(1か月に本を1冊も読まない子どもの割合)を調べています。「子どもの読書離れ」という言葉をよく聞きますが、実は小・中学生の不読率はそんなに高くないんです。小学生で1割、中学生で2割程度。2001年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定・施行され、朝の10分間読書の運動などが広がったことが功を奏したと考えています。しかし高校生になると、不読率は約5割に達します。高校生で読書をしなくなると大人になっても読まないままの人が多いので、高校生になっても読書を続けてほしいですね。 子ども時代に作文を書くことで得られるもの、喜びは何だとお考えですか。 読むことと書くことは連動しています。作文は、いろんな本を読んだ経験で培われた力が反映されます。最近はAIによる文章作成が流行っていて〝自分で書かなくていい〟という風潮もあります。しかし、AIは蓄積されたデータの中から文章を作り出しているにすぎません。使用者の考えや思いを表明・表現することはAIにはできません。AIの時代だからこそ、自分で書く力が重要になると思っています。作文を書くことで自分を表現する力を培い、その喜びを知ってほしいです。 作文はスポーツと同じで、何回も書くと上手くなります。読書も、何冊も読むと読むスピードが速くなります。どんどん読んで、どんどん書いてください。コンクールへの応募も、1回応募してダメだった、ではなく、10回、20回と応募してほしいです。私たち研究者も、良い論文1本の裏には何本も世に出なかった論文を書いています。ある意味、忍耐力が必要となりますが諦めないでください。 作文部門審査委員としての思い・意気込み等をお聞かせください。 作文を通じて、子どもたちがお米に対してどんな思いでいるのかということを知りたいです。身近な存在でもあるし、生きていくのに必要なお米やごはんをどう捉えているのか、それを知ることは大人にとっての学びにもなると考えています。私自身分からなかったようなことが、子どもたちの作文をきっかけに気づかされることも多いのでとてもわくわくします。 文章を書くときに気を付けたい点、応募作品に取り組む子どもたちに期待することを教えてください。 自分の言いたい言葉を国語辞書と突き合わせながら、ちょっと難しい言い回しに変えてみるなど冒険してみてほしいです。作文は、新しい言葉を使うチャレンジの機会です。この言葉は他にどんな言い方があるのか、この前本で読んだこの言葉を使ってみたい、など少し背伸びして書いてみることが大きな経験になります。学校の先生方は、子どもたちが使った言葉の意味が違っていたら、やさしく指摘してあげてください。 その他、改行後は1文字下げるなど細かい作文のルールは授業の中で指導があると思いますので、気を付けて書いていただければと思います。 最後に全国の子どもたちへの“応援メッセージ”をお願いいたします。 難しいことを書こうとしなくていいので、身近でくらしに欠かせないお米・ご飯について、素直なエピソードを書いてくれたら嬉しいです。このコンクールは全国から応募があるので、住んでいる場所によってお米との関わり方が違うと思います。自分で感じて、考えたことを自分の言葉で表現してください。そのときの世相がどう表現されるかも楽しみにしています。 審査員からの応援メッセージ 尾木 直樹氏 教育評論家、法政大学名誉教授 メッセージを読む 野口 武悟氏 専修大学文学部教授、公益社団法人全国学校図書館協議会理事長 メッセージを読む 岡田 円治氏 元(株)NHKアート代表取締役社長、日本美術家連盟準会員 メッセージを読む 竹村 和子氏 (公社)全国学校図書館協議会常務理事 事務局長 メッセージを読む 西巻 茅子氏 絵本作家(一社)日本児童出版美術家連盟 メッセージを読む 堀米 薫氏 児童文学作家(一社)日本児童文芸家協会理事 メッセージを読む 東良 雅人氏 元文部科学省初等中等教育局視学官、京都市教育委員会京都市総合教育センター指導室長 メッセージを読む 真鍋 和子氏 (一社)日本児童文学者協会評議員、日本大学芸術学部講師 メッセージを読む 郡司 明子氏 群馬大学教授 メッセージを読む 位川 一郎氏 農政ジャーナリスト、元毎日新聞経済部編集委員 メッセージを読む