審査員からの応援メッセージ(尾木 直樹)

作品制作に取り組むみなさんへ

作文・図画作品の制作に取り組む皆さんへ向けた、審査員のみなさんからの応援メッセージを紹介します。

図画部門審査会委員長尾木 直樹(おぎ・なおき)

教育評論家、法政大学名誉教授
1947年滋賀県生まれ。教育評論家。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校教師として、22年間子どもを主役とした創造的な教育を展開、その後22年間大学教育に携わる。
2004年に法政大学キャリアデザイン学部教授に就任。2012年4月同大学教職課程センター長・教授。定年退官後、現在は名誉教授。主宰する臨床教育研究所「虹」では、所長として現場に密着した調査・研究に取り組む。NHK Eテレ「ウワサの保護者会」では長年MCとして活躍。現在はフジテレビ「ホンマでっか!?TV」、日本テレビ「真相報道バンキシャ!」等のテレビ番組にも出演しており、「尾木ママ」の愛称で幼児からお年寄りにまで親しまれている。

図画部門の審査会委員長に就任されましたが、作文・図画を通じて「稲作農業全般についての学びを深めてもらう」当コンクールについて、どのようにお考えですか?

子どもたちにとって貴重な体験になると思っています。生きるという意味を知り、命と向き合う経験は、子どもたちの心を豊かにします。

とりわけ、図画は観察力が必要です。本当によく観察しないと絵は描けません。去年の作品を拝見しましたが、絵として上手だなというものや、よく観察しているなというものなどいろいろあって面白いですね。今年はどんな絵を見せてもらえるのだろうかと今からわくわくしています。僕も、うちの娘たちや孫たちも絵が大好きなんです。そんな環境もあって、とても楽しみにしています。うちの孫にも応募させたいなと思いましたよ。

先生にとって、「ごはん・お米」とはどのようなものですか?

私の生家は、兼業農家でした。田んぼがあって、土曜日の午後や日曜日は農作業を手伝っていましたね。母親はいろいろな野菜を作っていました。松茸狩りによく行ったのも覚えています。子どものころから農業は身近でした。
大学時代も文系の学部に行っていたのですが、自分は農家の生まれというのもあって農村問題研究会に所属していました。「援農」で群馬県嬬恋村に行ったとき、キャベツとタマネギのおかずを中心にみんなで鮭缶をご飯にかけて、食べていたのを覚えています。
カロリーベースの食料自給率は、僕が子どものころはだいたい70%台でした。それでも自分たちの食べるお米は、自分たちで生産しないと駄目だと随分言われていました。お米は日本を支える、国の礎だと思います。
また、私が中学校の教員をしていたとき、岩手県に田植えの修学旅行を試みたことがあります。おそらく東京で初めてだったと思いますが、話題になりました。地元のテレビ局が注目して、田植えの様子が夕方のニュースで流れたんです。ちょうど生徒がホテルで夕食を食べているときでした。自分たちがテレビで報道されるほど立派なことをやったんだと誇りに思えたことで、非行傾向にある子たちがみんな立ち直ったということがありました。米作りには、人を優しくする力があると感じましたね。

これからの食・農を担う次世代の子どもたちの作品に期待することは何ですか?

絵を描くことで、観察力がものすごく身に付きます。特に、幼児期の子どもたちは、観察力が生涯の中で最も鋭い時期です。その時期の子どもたちが描いた絵は大人を感動させます。一方、ありのままを描くものですから、子どもの考え、感性、うれしさ、悲しさ、つらさも含めて絵に反映されるので、子どもを理解するのに子どもの絵を見ることが非常に重要なのです。
昨年の作品の中で、素晴らしくて感動した作品がいくつもありました。大人には描けない絵です。画法に驚く作品もあれば、お米の匂いをふわっと感じさせるような作品まであり、思わず頬が緩んでにこっとしちゃいました。希望というか、未来を感じましたね。ぜひ、自由な発想で絵を描いて、応募してきてほしいですね。

教育評論家として活躍する中で、子どもたちの成長についてどのようにお考えですか?

2020年春から続くコロナ禍で、子どもたちの成長・発達への深刻な影響が懸念されています。そのことに、ようやく政府をはじめとして、大人たちが気付きはじめました。日本では何か起きると、つい大人目線に偏って捉えてしまい、子どもの問題は後回しにされがちです。
例えば、ゼロ歳から1歳の喜怒哀楽の感情が形成される時期に、保育士さんからママたちまでマスクをしていれば、赤ちゃんはそういった感情を十分に習得できません。2020年にある地域の保育士会の講演に行った時の話ですが、「先生、大変」と悲鳴が続々と上がってきました。オムツを替えるときに、赤ちゃんのお尻をなでなでしたりいろいろ働きかけても、反応が乏しいというんです。
コロナ禍は子どもの成長、発達に影響を与えてしまっていることがすごく心配です。最近では、体育の授業中や登下校時のマスクは必要ないといった内容の通知を文科省が出すなど、状況も変わってきました。しかし、今後も子どもの変化に注意して、子どもの声にしっかり耳を傾け、子どもと向き合い「聴く」ことが大事です。

審査会委員長としての思い、意気込みをお聞かせください。

約4万の作品と接し、絵と向き合うのが楽しみです。期待しています。審査会を経て、僕の子どもへの捉え方が相当変わると思っています。深みが出てくるだろうという気がしています。絵というのは見る者に訴えかける力がストレートですから、あまり先入観は持たず見たいですね。他の審査員の先生方のコメントを聞くことができるのも楽しみです。

最後に全国の子どもたちに向けて、“応援メッセージ”をお願いいたします。

コロナ禍が3年も続き、子どもたちは大変つらい思いをしていると思います。皆さんのお父さん、お母さん、学校の先生方も、経験したことのない生活を君たちは今、しているんです。
大変な状況ですが、どんな絵でも審査員の先生方を含めて、僕たちが受けとめます。給食でも、子ども食堂で食べている絵でもいいし、クレヨンでも、水彩画でもいい。いろんな絵をどしどし寄せてきてくださいね。尾木ママはしっかり見ていますよ。

他の審査員からの応援メッセージを見る

審査員からの応援メッセージ(50音順)

作文部門審査会委員長
中村 靖彦

東京農業大学客員教授、農政ジャーナリスト

図画部門審査会委員長
尾木 直樹

教育評論家、法政大学名誉教授

作文部門審査会委員
設楽 敬一

(公社)全国学校図書館協議会理事長

図画部門審査会委員
岡田 円治

元(株)NHKアート代表取締役社長、日本美術家連盟準会員

作文部門審査会委員
竹村 和子

(公社)全国学校図書館協議会常務理事 事務局長

図画部門審査会委員
岡村 泰成

美術家集団「Moss Spirits」代表、日本美術家連盟会員

作文部門審査会委員
堀米 薫

児童文学作家
(一社)日本児童文芸家協会理事

図画部門審査会委員
小柳津 須看枝

日本美術家連盟会員、元サロン・ド・トウキョー運営委員

作文部門審査会委員
真鍋 和子

(一社)日本児童文学者協会評議員、日本大学芸術学部講師

図画部門審査会委員
西巻 茅子

絵本作家
(一社)日本児童出版美術家連盟

図画部門審査会委員
東良 雅人

元文部科学省初等中等教育局視学官、京都市教育委員会京都市総合教育センター指導室長

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