審査員からの応援メッセージ(設楽 敬一)

作品制作に取り組むみなさんへ

作文・図画作品の制作に取り組む皆さんへ向けた、審査員のみなさんからの応援メッセージを紹介します。

作文部門設楽 敬一(したら・けいいち)

(公社)全国学校図書館協議会理事長
1954(昭和29)年、群馬県生まれ。群馬大学教育専攻科(理科)修了。1980年、埼玉県内の中学校教諭となる。埼玉県県民活動総合センター(ビデオ・コンピュータ)講師や埼玉県視聴覚放送研究団体連絡協議会副幹事長などを務め、2008年、社団法人全国学校図書館協議会に入局。2017年6月から現職。第2回(1991年)松下視聴覚教育研究賞表彰で理事長賞を受賞するなどしている。主な共著に『学校図書館活用名人になる―探究型学習にとりくもう』(2010年、国土社)などがある。

広い視野を持ち、さまざまな「多様性」を感じ取ろう
これまで、作文部門の事前審査に携わってくださった経緯がありますが、応募作品を読んで気づいたこと、感じたことはありますか。

このコンクールの審査に携わるようになったのは10年以上前になります。当時は、祖父母が米作りに従事して苦労している状況を書きとめた作品が多くみられました。機械化が進んでいるとはいえ、農業はまだまだ人の手に頼らなければならず、いかに重労働であるかを伝えていました。近年は、両親が会社勤めをしながら米作りに携わり、それを手伝った体験などをつづった作品が増えています。平日は会社で働き、土曜、日曜に農作業をする。農業を取り巻く環境が時代によって変化しており、子どもたちもそこに気づいているのではないでしょうか。
そのような中で、将来、稲作農家になろうとする力強い決意を感じさせる作品も少なくありません。子どもたちが農業を将来の職業の選択肢の一つととらえているところに、教育現場でも取り組まれている「食育」の効果もあるのだろうと感じています。

先生自身の子ども時代と比べ、現代の子どもたちを取り巻く食や農に関する環境は、どのように変化しているでしょうか。

父の実家は農家で、子どものころ、田んぼでヒバリのひなを見つけたりして遊んだのを覚えています。田植えも手伝いました。応募作品を読んでいますと、田舎の情景が懐かしく思い出されます。幼いころの体験は大切なものですね。
もし、子ども時代の私が「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクールの作文を書くとしたら、「母が作ってくれた塩おむすびはおいしい」「こんなにおいしい米を作ってくれる農家に感謝したい」といった内容にとどまっていたことでしょう。
一方で最近の子どもたちは、情報を得る手段が多様化し、国内にも海外の料理を提供する店が増えたことで、世界にはさまざまな食文化があることを知っています。「パンよりごはんの方が好きだ」「外国産の米は食べにくい」といった一方向からの視点ではなく、パンとごはんの特色の違いや外国産の米にも合う料理などを理解し、食の多様性に触れる作品が見られるようになりました。
自分の暮らす地域で作られたお米を使った郷土料理の魅力や家庭の秘蔵メニューの紹介など、食に関する関心の高さもうかがえます。そんな作品は「食べてみたいなぁ」と思わせてくれるので、読んでいて楽しくなります。

作文の審査をするにあたって特に心掛けていることはありますか。

世界の中での「日本の農業」に視点を当てた作品が応募されるようになりました。これも時代の流れですね。広い視野を持って日本の農業を考えられる大人になってほしいと願っています。そのため、単に日本の米を称賛するのではなく、食や文化の多様性に気づき、それらを受け入れる作品を評価するようにしています。

作文を書くことに挑戦することで、子どもたちにどのような変化や成長があると考えますか。

普段何気なく接している事象に対して、テーマを設定して自らの考えを文字で表現することによって、ものの見方や考え方の焦点化、つまり自分にとって何が一番興味深かったのか、重要だったのかといったことに気づく力が養われると考えています。多様な表現手段を身に付けることが、これからの社会を生き抜くために重要です。

応募作品を書くにあたって子どもたちに期待することは何でしょうか。

審査をしていると、毎年のように全国審査へ進んでくる児童・生徒がいます。低学年のときにいい作品を書いていた子は、成長するにしたがってさらに素晴らしい文章を書けるようになります。文章の書き方のテクニックを身に付けることはもちろん、やはり、他の人と少し違った視点で考えることができるからでしょう。その力を付けるには、自分の目で見て、自ら資料を調べて多様な考え方があることを知ったり、自らの考えを友達と意見交換したりすることが大切です。それらの取り組みを通して、作品にしていくことを期待しています。

全国の子どもたちへの応援メッセージをお願いします。

日本の人口は減り続けています。このような社会を経験した人はいません。
そのため、これからの日本には、経験のないさまざまな問題が出てくることでしょう。これまでの大人がやってきたことを真似しても解決は難しいと思います。過去のモデルに縛られることなく、主体的に考え、話し合いをして解決策を創造してほしいと思います。

(平成29年7月取材)

他の審査員からの応援メッセージを見る

審査員からの応援メッセージ(50音順)

審査会委員長
中村 靖彦

東京農業大学客員教授、農政ジャーナリスト

作文部門
設楽 敬一

(公社)全国学校図書館協議会理事長

図画部門
岡村 泰成

美術家集団「Moss Spirits」代表、日本美術家連盟会員

作文部門
竹村 和子

(公社)全国学校図書館協議会常務理事 研究部長

図画部門
小柳津 須看枝

日本美術家連盟会員、元サロン・ド・トウキョー運営委員

作文部門
堀米 薫

児童文学作家
(一社)日本児童文芸家協会理事

図画部門
中馬 誠二

季風会同人

作文部門
真鍋 和子

(一社)日本児童文学者協会評議員、日本大学芸術学部講師

図画部門
西巻 茅子

絵本作家
(一社)日本児童出版美術家連盟

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