審査員からの応援メッセージ(中川 李枝子)

作品制作に取り組むみなさんへ

審査員からの応援メッセージ

作文・図画作品の制作に取り組む皆さんへ向けた、審査員のみなさんからの応援メッセージを紹介します。

作文部門中川 李枝子(なかがわ・りえこ)

児童文学作家
1935年(昭和10年)北海道生まれ。東京都立高等保母学院(現・都立高等保育学院)卒業。保母として働きながら執筆活動を行い、1962年(昭和37年)「いやいやえん」で厚生大臣賞・サンケイ児童出版文化賞・野間児童文芸推奨作品賞、1980年(昭和55年)「子犬のロクがやってきた」で毎日出版文化賞、ほか数々の賞を受賞。代表作に「ぐりとぐら」「そらいろのたね」「ももいろのきりん」など。エッセー集に「本・子ども・絵本」がある。また、作詞家としても1988年(昭和63年)公開のアニメ映画「となりのトトロ」のオープニングテーマ「さんぽ」や「まいご」など数曲のイメージソングの作詞を手掛ける。代表作の「ぐりとぐら」シリーズは、野ネズミのぐりとぐらが様々な冒険をする絵本。ロングセラーを続けており、親子3代にわたって読み継がれている。

本当のおいしさを表し、食べたくなるような文章を
これまで長年にわたって審査にあたっていただいてきましたが、気付いたこと、感じたことはありますか?

どの作文もまじめで明るく楽しいのが特徴で、私まで元気をもらいます。それでいつも、受賞者のみなさんと直接お会いできる表彰式とその後のパーティーをたのしみにしています。つきそいの方たちも一緒に学校のことや家族のことなどいろいろお話できるからです。今までで特に印象深かったのは第36回(平成23年度)で内閣総理大臣賞を受賞した宮城県の中村早希ちゃんです。早希ちゃんは、東日本大震災で津波の被害をうけた避難所の様子を、おにぎりへの感激と感謝をこめて作文にしました。早希ちゃん一家は家を流されて仮住まいをしています。家族は元気で力強く前向きです。また、第37回(平成24年度)の作文第1部で農林水産大臣賞を受賞した愛媛県の渡邊廉君も、しっかりしたたのもしい少年でした。渡邊君のお母さんも小学生のとき作文・図画コンクールに応募したことがあるとか。そのほかにも、「世界の朝ごはん」というタイトルで応募した少女は、夏休みの自由研究で、毎朝、各国の朝ごはん作りに挑戦していることを知らせてくれました。念願がかなって東京の大学に入学できたもと中学生は、我が家にあいさつに来てくれました。作文がきっかけになってのうれしい交流は、私の大事な“宝”になっています。毎回、パーティーを楽しみにしています。

最近の子どもたちの作品について何か特徴がありますか。先生自身の子ども時代と比べてどうでしょうか?

全国コンクールに出品された作文は、最終審査までえらびぬかれただけあって素晴らしいものばかりです。そこに共通するのは食べることへの興味や関心です。自分から「作ろう」「食べよう」と積極的です。食は「心の栄養」にもなります。家族そろって食事をすることがどんなにたのしいか、家族そろって食卓を囲む幸せな光景が目に浮かんで感動します。みなさん本当においしそうに書いています。
日本には「いただきます」と「ごちそうさま」というとても良い言葉があります。食事を作ってくれる家の人はもちろん、大地の恵みを育てる農業、ゆたかな自然そのものへの感謝も忘れてはなりません。「ごはん・お米」は一番身近なところにあって、誰でも書けるテーマです。自分の言葉で作文にしてほしいですね。

先生が作文や文章に興味や関心をもったきっかけは何でしょうか?

私の子ども時代は戦争中で、自分の心を素直に表現する作文教育は否定されていました。食料も生活用品もすべて不足していて、配給切符制度なので買い物をした経験もありません。主食といえばジャガイモやカボチャばかりでしたので、スープやソーセージ、アップルパイがどんなものか知りませんでした。戦争中の子どもには「少国民」意識が植え付けられ、文章も“うわべ”だけのものしか書けませんでした。
こうした中で、楽しみは豊田正子さんの「綴り方教室」を読むことでした。豊田さんの家は東京の貧しいブリキ職人でした。小学生の頃、教師の指導で書いた作文が「綴り方教室」に収められ、ベストセラーになり映画化もされました。素直にまっすぐに暮らしている豊田さんに感化されました。
戦争中でも自由になれるのが本の世界。活字に飢えていて、父親の本棚から本を引っ張り出しては読んでいました。文字であれば何でも読んでいたように記憶しています。ルビがふってあったので、子どもでも読めたのです。忘れられないのが「グリム童話集」と小学校入学時に買ってもらった「アンデルセン童話集」です。戦後は、世界中の私と同世代の子どもたちがどう暮らしていたのか興味がありましたので、「岩波少年文庫」を夢中で読みまくりました。そして、その後、世に中にはいろんな子どもたちがいるから面白いと思い、保育の仕事に進みました。そんなある日、新聞で童話を書いている女性グループの記事が目にとまりました。当時、岩波少年文庫の編集をしていたいぬいとみこさんのグループでした。お仲間に入れてもらって同人誌を作りました。そこで書いたのが「いやいやえん」です。「いやいやえん」を出版するとき編集していただいたのが、児童文学作家・翻訳家として有名な石井桃子さんです。子どもたちが読んで楽しむ作品を書くために貴重な助言をたくさんいただきました。いぬいさんや石井さんなど良い巡り合わせがあったことが、私の大きな糧になっています。

子どもたちはこれから夏休みに入って作品制作に取り組みますが、制作にあたって子どもたちに期待することは何でしょうか。

作文は、自分で感じたことを相手にどう伝えるか――が基本です。何にでも好奇心をもつこと。人の真似はせず、うまく書こうとせず、字はしっかりと原稿用紙にきちんとおさめ、必ず読み返してください。
先生方は誤字脱字には注意してもらいたいですが、上からの目線で手を入れることは作文をつまらなくしてしまいます。高学年ではレポートのようになりがちなので気をつけて、自分の言葉で書くことが大切です。その点、低学年は自由でのびのびしていて、私もお手本にしたいぐらいです。

最後に全国の子どもたちへの “応援メッセージ”をお願いいたします。

本当においしいとはどういうことなのか、読む人も一緒に食べたくなるような文章を書いてください。作文をとおしてみなさん1人1人の姿が見えてきます。重労働だった稲作の手伝いも、収穫の喜びから食卓の「おいしいごはん」で大満足となります。お米1粒に八十八の手間がかかっていることへの感謝を忘れないで、「おなかいっぱい、心もいっぱい」になる作文を待っています。毎回できるものなら全員に100点満点をつけてご褒美をあげたいと思う位よい作文がそろいますので、たのしみに待っています。

(平成25年6月取材)

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審査員からの応援メッセージ

審査会委員長
尾木 直樹氏

教育評論家、法政大学名誉教授

作文部門審査会委員
野口 武悟氏

専修大学文学部教授、公益社団法人全国学校図書館協議会理事長

図画部門審査会委員
岡田 円治氏

元(株)NHKアート代表取締役社長、日本美術家連盟準会員

作文部門審査会委員
竹村 和子氏

(公社)全国学校図書館協議会常務理事 事務局長

図画部門審査会委員
西巻 茅子氏

絵本作家
(一社)日本児童出版美術家連盟

作文部門審査会委員
堀米 薫氏

児童文学作家
(一社)日本児童文芸家協会理事

図画部門審査会委員
東良 雅人氏

元文部科学省初等中等教育局視学官、京都市教育委員会京都市総合教育センター指導室長

作文部門審査会委員
真鍋 和子氏

(一社)日本児童文学者協会評議員、日本大学芸術学部講師

図画部門審査会委員
郡司 明子氏

群馬大学教授

作文部門審査会委員
位川 一郎氏

農政ジャーナリスト、元毎日新聞経済部編集委員

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