植え替え~植え替え後の成長(分げつ)の変化、
中干しの仕方と注意点
植え替えの手順
植え替えする時期は、1本の苗から葉が3、4枚出てきた頃です。相談室では5月18日に種まきをして、6月7日に植え替えを完了しました。その時の、草丈で一番低かったのは「あきたこまち」の20㎝で、最高丈は「黒米・朝紫」の29cmと成長に大きな差がでていました。1株の本数は全て4本に統一しました。
- 根を傷めないように、苗を全部抜きます。
- 抜いた苗の中から、茎が太くて背が高い元気な苗3~5本を1つにまとめ(1株)バケツの真ん中に植えてください。植え替えた直後は、バケツに水を張らないで、泥の表面の凸凹に少し水たまりが出来る程度根付くまで(数日)水位を保ってください。1日で水が土に浸透しますので、翌日はまた同じ程度の水を入れ、苗が土に根付いたら苗の身長の1/3の高さまでなら水を張っても大丈夫です。相談室で栽培している苗は20cmありましたので、苗が根付いたらバケツすれすれ(5cm)に水を入れても大丈夫ということになります。
植え替え後の観察の注意点
植え替えが完了して根付いた後から中干しまでの期間は、苗が少しずつ成長し、1本からどんどん茎が分かれて(分げつ)本数が増えていきます。1週間から2週間毎に稲の身長や、茎数を記録しておくと、後からでも稲の成長が分かりやすいですね。成長過程の注意点は主に水管理と病害虫、そしてスズメです。この時期、相談室で栽培している苗に発生した害虫と対策を紹介します。
- ウンカ
- 植え替えてから数日後くらいから発生することがあります。稲の周りをブンブン飛んでいたり、稲に止まって養分を吸い取っていますので、見つけた時は、バケツの水に食用油を数滴入れ、水の表面に油膜をつくった後に稲をゆするとパラパラとウンカが水の中に落ちます。すかさず、水の中に沈めて油膜で窒息死させます。ウンカのイメージは小さくて小蝿の様です。
- イネアオムシ
- こちらは、蝶や蛾の幼虫のアオムシです。苗の色も緑色、アオムシも緑色なので、よく見ないと気付かない事もあります。葉の食害を見つけた時は、葉がまるまってる場所や、折曲がってくっついているところを探し、その中を開くとアオムシが隠れています。見つけた時は、ビニール袋などに入れて密封してゴミとして処分するなど、再び現れないように駆除します。
相談室では、屋上で苗を育てているので、害虫は少なく上記の2種類ほどしか現れていませんが、他にはニカメイチュウなども代表的な害虫で、茎の中に入り、中から養分を吸い取ります。時折茎の下の方を触ってみて、中が空の様な茎が何本もある場合は、その内の1本を根元からハサミで切り取って中を見てください。ニカメイチュウがいたら、中がスカスカの茎は全て切り取った方が良いでしょう。時折観察していれば早めに発見できて、早期駆除ができます。
病気ではイモチ病が代表的ですが、全般的に稲の病気の原因はカビ菌が殆どなので、日光の陽がよく当たり、風通しが良い環境であれば、菌が繁殖する可能性は低くなります。特にバケツ稲は苗と苗の間隔が広いので、環境さえよければ心配する必要はないでしょう。
中干しの注意点
中干しで一番気をつける事は、穂の元になる幼穂ができる少し前に行う事です。目安は、稲の身長が50~60cmほどで、茎数が20本程度に増えた時期に行います。これを過ぎた場合は、中干しをする前に、稲の茎の下の方を触って幼穂ができていないかを確認します。太くて固くなってる場合や、今まで垂れていた葉がまっすぐに立ってくる場合は、幼穂ができていますので中干しは省略してそのまま育ててください。
相談室では、育つ気温の差のある地域の稲を一緒に育てていますので、それぞれの成長速度が違います。北海道の「ななつぼし」は、本日(7月27日)、1本出穂しました。青森県の「まっしぐら」も穂の元の幼穂が茎の下の方にできていましたので、この2品種の中干しはしないで育てることにしました。
幼穂が出来る時期が、稲の一生の中で一番栄養が必要になる時期なので、水を抜くと栄養が減少し栄養を十分幼穂に送れなくなります。今年は、植え替えの時期が平均より1カ月遅い6月中旬のため、他の稲の中干しはもう少し後に行う予定です。
中干しをする理由
水を抜いて稲を乾かすと、根は土の中の水を求めて下の方へどんどん伸びていきます。根が伸びる事で栄養の吸収度も上がる事と、土が乾く事で空気層ができて根が酸素を取り入れやすくなり、丈夫な稲になります。
また、中干しをすると、それまでどんどん進んでいた分げつ(茎が分かれて増える)が止まり、穂をつくる準備を始めます。茎が増え過ぎると、穂へ送られる栄養が分散してしまいますので、ある程度の本数を確保したところで分げつを止める意味もあります。